介護職は利用者と密接に関わるため、サービス提供中にハラスメント行為や暴力行為を受けるケースがあります。例えば、利用者が故意に女性介護職員の身体に触れて不快感を示すことで自己顕示欲を満たす事例や、暴力を振るった上でケアプラン外のサービスを強要する事例など。利用者の心理状態が不安定だと割り切って我慢する介護職員もいるようですが、利用者から受けた行為はその場で上司やサービス提供責任者に報告し、行為を密室化しないことが重要。その日のサービス提供を打ち切ることもやむを得ないでしょう。事業所への報告後、初回の行為では利用者や家族への警告、行為が複数回に及ぶと事業所の運営規定に基づき契約解除となります。
事業所が一方的に契約を解除した場合、利用者の生存権を侵害する点で問題視されがちなので、行政機関(主に地域包括支援センター)やケアマネージャーと連携して後継となる事業所を探した上で、サービス提供者会議を経て契約終了とするのが実務上では一般的。契約終了までの間は2名介助を行うケースもあるが、介護保険で介護者2名分の算定を認められるケースは少なく、1名分の人件費が持ち出しになることもあるようです。
利用者による暴力行為でケガをした場合は、仕事上の負傷として労災から治療費や休業補償(平均賃金の8割相当)を受けることができます。事業者が労災手続きを渋った場合でも、自分から労働基準監督署に申し出た上で手続きを進めてもらえることも覚えておくと良いでしょう。なお、仕事上の負傷では健康保険証を利用できないので注意が必要です。